Be:17 chicken
- カテゴリ:自作小説
- 2010/04/03 21:28:33
自分勝手な感傷で愛香にハグをした僕を、愛香は静かに拒んで、手で押し返した。
彼女は寝ていなかったのだ。
その瞬間、僕はようやく冷静になった。そして、冷たい思考に触れた。
ガントは、僕は、愚かだったのかも知れない。
死んだ敵の分まで、なんて偽善に過ぎないんじゃないか。
そして、愛香は僕のせいで傷ついたんだと、改めて噛みしめた。
彼女はしんとしたまま、声も出さずに泣いていた。
「ひとりにしてほしい」という要求を口に出さずに、目を瞑ることで我慢していたのに、
僕は察してあげることが出来なかった。
優しさは押しつけるものではない。分かっていたはずだったのに。
辛く苦しい現実を、愛香は静かに泣きながらも受け止めようとしていたのに。
自分が無様だったし、どうしようもなく悔しかった。
そんな、僕と愛香の様子にガントは気づいていない。
ギャグを言うような気分にもなれず、僕は黙った。
ガントもなんとなく黙っていた。その脳にどんな思考が巡っているかは想像がつかない。
僕もガントも間違っていたとしたら、正解はなんなのだろう、と思う。
このサバイバルで殺していくという、行動をとる上でどんな思考が正解なのか。
それは死んだ敵を思いやることでもないとして、生きる為のいいわけでもないとしたら。
頭がパンクしそうだった。思考がたくさん浮かぶからではない。むしろその逆だ。
頭のうちをえぐるように考えても、それらしいことがまったく浮かばないのだ。
えぐり過ぎて内側から穴が開きそうだ。
「5千万円」
唐突に僕は呟く。なんだ、とガントは呟く。
「5千万円、僕はもう、いらないかも」
ためらいながらに僕は言った。結局迷っている僕がここにいた。
「…お前、馬鹿じゃねえの…」
心底呆れたように言うガント。
「馬鹿なのはこの国だろ…」
間を置かずガントは言う。
「じゃあ、なにが馬鹿じゃないんだ?」
それは僕があのメリケン野郎に言った言葉にそっくりだった。
「こないだまで続いてた日常が馬鹿じゃねえよ!あれが綺麗なんだよ!こんなの馬鹿だ!」
立ち上がってガントに向かって僕は叫んだ。相当にうるさい。けれど抑えることは出来なかった。
ガントにここで殺されるかも知れない。一瞬そう思った。
そんな行動を取るならそこまでのやつだったんだろう。
冷静にそう思う自分と、殺されたくないと怖がっている自分とがいた。
僕はどれだけ人を信じられなくなっているのだろう。自分に失望してしまう。
「現実を見ろ。んで、ゆっくり飲み込め。俺らはもう進むしかないんだ」
鋭い目が僕をとらえる。その目には震える僕が映っているのだろうか。
「僕は、殺したくない…」
目を伏せて言う。
「お前、生物として、終わってるぜ…」
ガントはゆっくりとそう言った。
そして、叫んだ。
「弱音なんか吐くんじゃねえ!んなもん聞きたくねえ!」
僕の情けない叫びなんかとは比べ物にならない音量と迫力。
雄叫び、という形容こそ、それにふさわしかった。
愛香の身体はその叫び声にびくっと反応した。僕も似たような反応をした。
「動物は生きる為に他の動物を殺すんだよ。俺らもそれをしなきゃ生きてけねえんだ。
これは義務だ。従わなきゃ自分が殺される」
息は荒いが、ガントはしっかりと感情を抑えてそう言った。とても現実的な意見だった。
「僕らは人間だ」
僕も自分の意見を通す。その時には漠然とした1つの案が頭の中に湧いていた。
それは二択問題においての第3の解答のようなものだった。
「なんか企みがあんのかよ。適当にそんなこと言ったんなら、一発ぶつぞ」
「この【馬鹿】を終わらせよう」
「このサバイバルをか。なに言ってんのか分かってんの…」
「どうせ死ぬかも知んないんだ」
「俺らなら切り抜けられる」
「だったら国にだってあらがえる」
「…」
ガントは黙った。考えているようだった。
「まず、仲間を集めるんだ。計画も練らなきゃいけない。相手は火器と新資源を持ってる」
「結局は誰かを殺すことになる」
予想は出来た言葉だった。
「…」
しかし、僕は答えられない。
主人公も大分たくましくなりましたし、仲間も出来て。
この話の真の部分が垣間見れたお話だったと思います。
プレッシャーを掛けるとするならば、普通に政府を倒してハッピーエンド、政府に倒されバッドエンド。
かならずどっちかに転ぶ訳ですが、読者を裏切るようなエンドが見てみたいですね。
この時期、受験やら何やらで色々と忙しかったり、悩みを抱えてしまったりと大変ですが、
もし私何かで宜しければ愚痴も聞きますし、ウサ晴らしの助太刀もします^^*