初夢の続きは (5) 『斜陽』
- カテゴリ:自作小説
- 2010/04/03 01:25:07
斜陽が白亜の校舎に紅を散りばめ始めていた。
空の焔が、光彩を刻一刻と変じて見せ、あたかも肉眼で時を見ているかのようなそんな夕刻…。
オレンジの西日を浴び、教室で一人突っ伏していた悟に梅子は声を掛けた。
「悟、何してるの?」
「え?」
悟は飛び起き、突然現れた梅子を、キョトンとした目で見つめていた。
「梅子?夢の隠し場所は?」
「え…」
梅子は一瞬、険しい表情を見せた。
しかしすぐに、柔和な顔に戻ると
「あんたねぇ、なに寝ぼけてるのよ!」
と、大声を上げた。
悟は、前の校舎の屋上を見たが、そこには松梨の姿はすでになかった。
「あれ?松梨居なかったか?」
「ん、見てないけど」
「そっか」
悟は、そのまましばらく屋上を見つめていた。
するとぼんやりと、松梨の幻影が浮かんだような気がした。
「何ぼーっとしてるの?まだ寝ぼけてるの?帰るよ帰るよ」
「ああ、そうだな」
悟は、素早く鞄を手に取ると出口へ駆け出し
「ほら梅子何してんだよ、帰ろうぜ」
と逆に梅子を急かして教室を後にした。
校門を出たところで、梅子は、悟に声を掛けた。
「ねぇ悟、手をつないで帰ろうか?」
「はぁ?何で?」
「そろそろ使ってあげようと、思ってさ」
「何の話だよ?」
梅子は、パウチされた小さな券を悟の前で、ブラブラさせた。
そこには、『梅子専用、悟なんでも言うこと聞く券』と書いてあった。
小学生の頃、悟は、梅子の誕生日プレゼントにUFOキャッチャーでぬいぐるみを取って贈ろうと考えていた。 だが、結局お小遣いをすべて注ぎ込んでも取ることは叶わず。 一文無しになった悟の窮余の策が、この券だったのだ。
「お前…まだこんなものを」
「期限なんて書いてなかったし、まだ有効よね?」
「わかったわかった」
そう言うと悟は、梅子の手をぶっきらぼうに取ると歩き出した。
「あんた赤くなってない?」
「なんでだよ」
途端に悟の顔色は益々赤くなる。
「このエロガキ」
「あのなぁ…」
梅子が突っ込み、悟が反撃してくる。
その流れがいかにも自然で、当たり前のように繰り返される。
それはずっと昔から、まるで摂理のように続いてきた。
梅子は、こんな優しい時間がずっと続けばいいのに、と思いながら、海沿いの道を歩いていった。
「見ろよ。夕陽が沈むぞ」
悟が、足を止めて、水平線を指差した
すると、梅子は真剣な顔で、少々不思議な物言いをした。
「ううん。夕陽は沈まないよ、あれは海に溶けているの」
「はぁ? 何言ってるの?」
それを聞いて、悟は笑い出した。
梅子も、釣られて笑い出した。
消え行く夕日を、横目に二人は、また歩き出した。
そうして曲がり角まで続いた左手のぬくもりが、ふと消えて行くのを梅子は感じた。
あわてて左手に視線をやると
悟の指が、ゆっくりと離れていくのが見えた。
絡まっていた糸がほどけていくように
まるで、スローモーションのように
梅子の目には映っていた。
(もう、終わりかぁ)
繋がれていた悟の右手は離れ、やがて左右へと振られた。
「じゃあ、また明日な」
「うん、また明日ね」
こんな単純な言葉のやりとりが、痛いくらい梅子の胸を締め付けていた。
(うん、でもまた明日会えるよね)
梅子も大きく手を振って、悟を見送った。
夕陽は今にも海の世界を照らしに行きそうで
茜色の空は、今にも夜の帳を降ろしてしまいそうだった。
朱に染まりだんだん小さくなる背中を見つめていると
会いたい気持ちがすぐに梅子を苦しくした。
(また今夜も、眠れなかったりするんだろうな)
そんなことを思っていると、
悟の後ろ姿が、ゆっくりと振り向いて、大きく手を振った。
「バイバーイ」
少し嬉しい不意打ちに、梅子も大きく手を振り返して
「バイバイ」
微笑んで、そうつぶやいた。
梅子は見えなくなった背中に背を向け、ゆっくり歩き出した。
しかし、すぐに足を止め、鞄のキーホルダーを手にした。
(しかし、本当にいつ取りに来るつもりなのかしら)
小さな小瓶のキーホルダー、その瓶の中にはバッジのようなものが入っていた。
(悟、大好きだよ いつか本当に…)
暮色掛かった空を見上げ、梅子は歩みの速度を上げた。
その夜、優は自室の勉強机に座り頬杖を付きながら鏡に向かってつぶやいていた。
「はぁ~やっぱり運命なのかな~」
広げた占いの本には、たくさんの書き込みがしてあった。
(やっぱり、相性バッチリ 悟先輩以上の相手なんて考えられないよね)
一年前のあの日、そして先日の入学式、2つの出会いは運命という言葉を納得させるには十分であった。
「それに、なんだかカッコイイし」
友達に、隠し撮りしてもらった悟の写真が入った写真立てを両手で持ち上げた。
持ち上げては置く、持ち上げては置く、そんな動作を何度か繰り返すと
う~~~んと大きく伸びをした。
すると階下から母親の声がした。
「優ちゃん~お風呂入っちゃいなさい」
「は~い」
椅子から立ち上がり写真立ての上部に指を掛けた。
「大好きだよ、先輩」
写真立てを、手前に倒し、優は部屋を出た。
ゆっくり読みますwww
さすがです。
早く次が読みたいな
続きも書いてください><
楽しみにしてます♪
あなたのサバイバル度・・・ずばり
★40%★&あきらめが早すぎよ!
あなたはダウンしそうなタイプよ!
すぐあきらめたりしない?
「こうしたい」と強く感じたら、その通りに行動すれば、ラッキーを手に入れれるかも!
以上
ありがとうございました。
謎が多くて・・先がよめない・・
それが・・おもしろいんだけどね^^
早く・・続き読みたいなぁ~(#^.^#)
待ってるから・・よろしくお願い致します!(^^)!
だいじょうぶなの~~~~~?
収集付くのかな~~~~?
あ!そこ心配するとこじゃない・・・(;^ω^)
優の登場ねん。
優の活躍を期待しつつも、梅子の存在は大きいですねぇ~。
あ・・・でも、夢の隠し場所は教えて貰えなかったんだね。。。
キーホルダーの中身・・・かな?
ん~・・・イロイロ気になるコトばっかりで、続きが楽しみデス!!
これからの優ちゃんも楽しみのひとつですね✿