■近代文藝之研究|研究|近代批評の意義(26)
- カテゴリ:その他
- 2010/04/02 00:08:49
■近代文藝之研究|研究|近代批評の意義 (26)
されば到底批評壇は舊標準に代つて立つべき新標準を何れにか見出ださゞるを得ない状勢となつた。此の時にあたり、劃然異つた二つの重大なる傾向を代表して英國の批評壇に見はれたものがカーライルとマシュー、アーノルドとである。カーライルは人も知る如く英国精神界の豫言者と歌はれ、現在の社會に慊たらずして、新天地新文明を絶叫し、いはゆる文明の批評家指導者を以て一代の任とした人であるが、其の半面はやはり文藝の批評家である。
マシュー、アーノルドはカーライルに比すれば、後一輩の關係である。カーライルをして十九世紀の中葉を代表せしめれば、アーノルドは其の次の一ゼネレーションを代表する。但し彼れは一方に於いて當時詩壇の知識派といもいふべきものに重要の地位を有すると共に、純批評家としては、恐らく近代最大家の一人であらう。獨のレスシング、佛のサント、ブーヴと并んで近代の三大批評家とたゝへられる。
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*註1:批評壇・批評家
「評」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hyou.jpg
*註2:状勢となつた
「状」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/jyou.jpg
*註3:英国精神界
「精」の正字体。旁の「青」の「月」は「円」。
「神」の旧字体。扁の「ネ」が「示」。
*註4:豫言者
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg
*註5:現在の社會
「社」の旧字体。扁の「ネ」は「示」。
*註6:文明・文藝
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
*註7:絶叫し
「絶」の正字体。旁の「色」が「刀」+「巴」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zetsu.jpg
*註8:指導者
「導」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg
*註9:其の半面
「半」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/han.jpg
*註10:十九世紀
「紀」の俗字(か?)。「糸」+「已」。
*註11:其の次
「次」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ji_tsugi.jpg
*註12:重要の地位
「要」の俗字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg
*註13:近代最大家・近代の
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註14:獨のレスシング
「ス」は小文字表記。前出時(⇒近代批評の意義(14) )では標準サイズの字形だった。[参照:原本前出箇所⇒http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1]
*註15:并んで
「并」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hei_awasu.jpg
*註16:たゝへられる
原本では「たゞへられる」となっていたが誤植と思われるので改めた。
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http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html