Nicotto Town



Be:15 aika

さすがにこんな時間だからか、敵に遭遇することはなかった。

ファミレスを見つけると僕たちはすぐに入った。
僕の横にはやっぱり愛香が座ってきた。そして、ガントは座っていても大きかった。
その大きさにはもはや、感動する要素すら見出せそうだ。

店員が来ると僕たちはそれぞれ注文した。


思いだして言う。
「身長いくつだよ」

「200」
やっぱり。それぐらいないと納得いかない。

「体重」

「100」
これまた、ビッグスケールだ。

「すげえな…」
ピンときて、僕は、合わせると?という問いをつけた。

「300」

「英語にすると?」

「英語?スリーハンドレッド?」

「僕の好きな映画は?」

「知らねえよ。…あ!スリーハンドレッドか!」
嬉しそうに答える。

「そのとおり」

「再上演してたな。こないだ」

「100年以上も前の映画だけど、面白いよな」

「国が目指してんのも、少数精鋭、だろ?」

「少数精鋭?」
頬杖までついて、退屈そうに聞いていた愛香が入る。

「少ない人数でも、1人ひとりが優れてるってことだよ」
説明してやる。

「へえ~…」

やっぱあれだよな、とガントが言う。
「新資源が世界にとって脅威だから国も決死の覚悟で守らなきゃいけないんだよな」
興奮した風に、ガントがその大きな身体を前のめりにする。凄まじい迫力だ。

「皆で使えばいいのにねー」
また愛香が言った。本当につまらなさそうだ。

一度は笑って、ガントが愛香に問う。
「目の前にめちゃくちゃ美味しいケーキがあったとしたら、独り占めしたくねえか?」

「したいけど…」

「だったらしちゃえ、ってことなんだよ」

「でもそれって、ただのわがまま」
愛香が口を尖らす。

「まぁな。でもよ。そうやって戦争とは起きるし、たくさんの人が血を流し、死ぬ」

「あたしはわがままにならないもん」
愛香が黙りこむ。

「じゃ、おんぶはもう、なしな」

「ええー!」

「あー、うるさい」

わざとらしく耳をふさぐと、ふさいでた方の腕を愛香は引っ張ってきた。
「うるさくない!」

「お前ら、店だぞ?」
ガントが微笑ましそうに言う。

ようやく愛香が離れると、注文した料理も運ばれてきた。

「よし、食べるぞー!」
僕が約1日ぶりの食事に意気込む。

「ガキか、お前は」

「だから、今更だって」



誰よりも意気込んだが、誰よりも早く食べ終わってしまった。
暇なので2人の食いっぷりを見る。
ガントの勢いは予想通りのもので、その巨体を納得させる。

「お前、腹はブヨブヨなのか?」

「ブヨブヨではないぜ。少し出てるけど筋肉も多い。自分で言うのもなんだけど、
腕とか脚は本当に筋肉でパンパン」

「あー、おっそろし…。聞かなきゃよかった」
だったら訊くな、とデコピンを喰らう。

ガントまで食べ終わると、2人してボーっと愛香を見つめていた。
髪の長さはミディアム。光を受けて、ちょっぴり茶色が目立つ。
小顔で目が大きく、二重。鼻筋も通っていて、その歳で美人の要素をいくつも持っていた。
本当に弟の嫁にしたい。



って、茶色?それはけしからん。

「お前、髪染めてんの?」

「え?…うん。皆染めてるよ?」
パスタを口から少しはみ出しながら言う。言い終わると、つるっと吸った。

「まったく、最近の小学生は…」

「俺も染めてるぜ?」

「おめぇは16だべ」

「だべって…。お前、どこの人間だよ」

「黒に戻すからな」

「ええー、やだ!」
精一杯の嫌な顔をする。

「戻す」

「…やだもん」

その後も僕がしつこく戻すと言ったら結局、渋々ではあったが愛香は了解した。

「てか、あれだ。僕のせいで、今までご飯全然食べられなかったでしょ。ごめんな」

「あー、ホテルの時は運ばれてきたから大丈夫だったよ」

「…謝んなきゃよかった」

「へへえー」
自慢げに愛香が笑う。




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