Nicotto Town



Be:13 kyoudai

「ここから移動するか。撃ってきたのが何者か知らねえけど、
この期間中でも禁止の銃を使って来るなんて相当ヤバいぜ」
走りながらガントが言った。

「だな…」
相手を確認するべきだったのかも知れないが、今更悔いても仕方がない。
これからどうするかが大切だ。

「これからどうするよ」
ガントが訊ねる。看板を頼りに僕は駅へと向かっていた。

「とりあえず駅だ。それより」

「なんだ」

「その衝撃吸収とやらはどこで買った」

「こういうのは、そういう専門店で売ってる。ダチによれば、見つかりにくいが
街に1店は絶対あるらしい。最近は治安も悪いからな」

「僕でもつけられるか?」

「これが始まってからはサイズも豊富になったらしいぜ。問題ない」

「買うっきゃないね」

「待て待て」
焦らすように言うガント。

「なんだよ」

「筋力がないと、身体を守れても動きづらいぞ?」

「あ、そうか」

「やっ」
不意に愛香の手が離れる。転んでしまったようだ。

「大丈夫か?」

なんとか立ち直ると、擦りむいたのか膝を気にしながら愛香は息を整えている。
大分走ったので疲れているようだった。

「結構離れたし、歩こう」
僕が提案するとガントは頷いた。
そして、そのダボダボのズボンのポケットに手を忍ばせたと思うと、絆創膏を出してきた。

【10時間で元通り】とかいうキャッチコピーでお馴染みのやつだった。

「あー、でも、つける前に洗わねえとな。
たしかこの先にちっせえ公園があったはずだ」

愛香が痛そうにしていたので、前でしゃがんでやった。
「おんぶしてやる」

「ありがとう…」
恥ずかしそうに言うと、首に腕を回して体重を預けてきた。
その脚をしっかりと支えて歩きだす。

見ると、七分までのパンツのその膝はかなり擦れていた。



歩いて少しするとガントがしきりにこちらを見て微笑む。

「なんだよ、キモいぞ」
そのガントに向かって言う。

「怒るなって。ただよ、兄弟みたいだぜ」
まだ笑っていた。

「弟のフィアンセだから、まぁ、そんなもんだな」
僕も笑って言う。

「決めないでよ」
後ろから背中に軽く頭突きされる。

「なんだよ、僕の妹になったら色々得だぞ?」

「例えば?」

「綺麗な兄嫁が見られる」

「へぇ、なに?大地、彼女いるんだ」

「マジで?」
ガントがこちらを見る。

「はは…、これ恥ずかしいな…。言わなきゃよかった」

「全く最近の中学生は…」
呆れるガント。

「お前、いないんだ」
「ガント、いないんだ」
僕と愛香が声をそろえる。

「うっせえ」
後ろから順に頭に軽いゲンコツを貰う。

「いったいよー」
「本当にね」

「お前らがいけねえの」

そんなことをやっていると、
「あ、公園」
公園に着いた。

「自分で洗えるか?」

「子ども扱いしないで」

「ここにいる全員が子どもなんだけどね」

「へへ」
笑って水飲み場の方に走っていく。少しは元気になったみたいだった。




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