Be:12 ggantho
- カテゴリ:自作小説
- 2010/03/30 21:42:31
「大丈夫ですか!?開けてください!」
僕が閉めたドアをガンガン叩く。ホテルの従業員が来たようだ。
「問題ないです」
「でも爆発があったと連絡がありました!」
彼がいらつきながらドアの方を睨む。ばれると面倒なので、手で制してなだめる。
従業員との会話を続ける。
「爆発?悪い夢でも見たんでしょ」
「いえ!地響きみたいなのもありましたから!」
「とにかく、ここじゃないと思います。今寝てんですから早く引き取ってください」
「え…、はい…」
馬鹿な従業員だったようで、すぐさま隣の部屋をあたり始めた。
「どうせまた戻って来る。話すことは済ましておこう」
彼が頷く。愛香は布団にくるまりながらずっと僕のそばから離れない。
残念ながら今日はもう寝られなさそうだ。
「まず、出る時は窓から出る。俺の身体にはあちこちに衝撃吸収がついてるから、
飛び降りたらしっかり受け止めてやる」
「それ、うまくいくか?お前にもこいつにも怪我はさせたくない」
「ふん、心配するな。何人も成功してる」
文字通り、鼻を鳴らして彼が自らの胸をバシバシと叩く。心強い男だ。
「オーケイ。名前を聞いてなかったね」
「ガントだ」
「病気みてえな名前だ」
からかってやる。
「うるせえ。お前は?」
笑って返される。
「タイチ」
「ふん、いじりようがねえな…。まったく…。お前は?」
なるべく姿勢を低くして愛香に視線を合わせるようにするガント。
「…アイカ」
「よし、いい子だ」
ガントが愛香の頭を撫でようとするが、僕がその手を払う。
「ケチくせえやつ」
「弟のフィアンセなんだよ」
そんなことを言うと愛香に腹をつねられた。
「で、歳は?僕は14、愛香はお前の予想通り12」
「16だ。敬語はいらん」
「使う気もないよ」
胸を小突かれる。ふん、と今度は僕が鼻を鳴らす。
なんだかガントとは気が合いそうだった。
「あのー!やっぱり爆発があったということなんですが!」
「アホが来たぜ」
「うん、出よう」
愛香を着替えさせて、僕も着替えてから、傘に剣をしまう。
準備の途中で、ガントが背負っているのは盾と大きな剣であることが分かった。
「RPGかお前は」
盾をコンコンと叩きながら訊く。
「俺が使うとなかなかのもんだぜ」
「ほお。じゃ期待する」
やかましい従業員の声をBGMに、冗談を飛ばしながらさっさと準備を済ます。
「準備は出来たか?」
彼が訊く。
「おう」
「はい」
おもむろにガントが愛香に歩み寄る。
「じゃ俺とコイツが先に飛ぶ」
愛香の肩に手を乗せるガント。
「え!?」
驚く愛香。
「愛香、怖がりそうだしな」
「だろ?んで着地したらお前が飛んでこい。受け止めてやる」
頷く僕。
愛香は不安げに僕を見つめる。
「大丈夫だって。こればかりは大丈夫だ。こんなでけぇんだぞ」
なんとか彼女は首を縦に振る。
急いでベランダに移動する。相変わらずシンと静まっている。
「よし、行くぜ」
愛香の腕をその首の後ろに回して、爆発によって壊れた場所からガントが飛ぶ。
一度ドアを振り返ってから、ガントたちを見守る。
地面までは、ここから相当の距離がある。
垂直に落ちていく彼らはまたたく間に米粒になっていった。
そして、着地。するが、距離の関係からか、その音は全く聴こえない。
いや、ガントの言っていた衝撃吸収とやらが作用したのかも知れない。
不意に、従業員の声はドアの開かれる音に変わる。
僕は振り返らずにそこから飛ぶ。
と、間もなくプスというアクション映画で聴いたような音。
サイレンサーというやつが装着された銃の発砲音だ。
瞬間、シューンというアニメチックな音も耳をかすめる。
間違いなく銃だ。
しかし落ち始めるともう、どうしようもない。
また撃たれるかも知れないと思ったが、撃って来ないことを願うしかなかった。
緊張を保ったままスカイダイビングの形でガントに近づく。
逃げるように飛んだので垂直にはならなかった。
「よくやった!」
ガントの言葉を受けるとやっと緊張が解けた。
受け止めて貰うとガントは少しよろけたが、それだけで済んだ。
多少の衝撃はあったものの、あの高さから飛んだら、普通は2人ともあの世行きだ。
「早く逃げよう。飛ぶ際に誰かが撃ってきた」
下ろして貰うとすぐに言って、僕は愛香の手を引いた。
頼もしい!!
タイチ、ガント、愛香、、、これからどうなっていくんでしょう。
白鬼都市さんの小説はほどよい緊張感が全体に混ぜられていて素晴らしいなと思います。見習いたいです。
新しく仲間になったガント、私と同い年なんですね(笑) ちょっと笑っちゃいました。
ちょっぴり凶暴ちっちゃな愛香ちゃんと、実は優しい見た目で損をするでっかいガント……。
何だか可愛らしいコンビですね^^*