Be:9 zancoku na kkecca
- カテゴリ:自作小説
- 2010/03/29 22:38:02
身体の向きはそのままに、右手の剣を逆手持ちに変えながら相手の左側に素早く移動する。
鉄棒が振り下ろされた直後に、剣を彼の喉仏に持っていく。
力を込めてそのまま水平に押していく。
声にならぬ声をあげながら彼は喉を押さえながら倒れる。
むなしい音を立てて鉄棒は転がっていく。
このままでは終わらない。
まず、彼にカードを要求した。あっさりと彼は渡す。
ついでに、こんなことを言う。
「助けて、くれ…」
残念ながら、そんな計画は僕にない。
剣を順手持ちに変えると、立ったまま彼にまたがり、その身体を切りつけていく。
あちこちからあがる悲鳴と、僕の狂った叫声、そして雨の音が響く。
そこに彼の声はない。
雨はいつの間にか土砂降りになっていた。
膝をついて彼に言う。
「あしからず、な」
戻ると取り巻きはすぐに殺してしまった。愛香の腕をとるとそのままホテルに入る。
愛香は抵抗することを忘れるほど、放心していたようだった。
僕もそれに劣らぬほど放心していた。
フロントでは意味の分からないことを訊かれた。
政府から参加者に対して、メディシン部屋という特別な部屋が用意されているが、
それでいいか、という確認。僕は適当に頷いた。
キーを渡され案内される。
値段を訊いていなかったが、結構高そうな雰囲気。
しかし、9万もあれば間に合うだろう、そう思った。
そこからの記憶は曖昧だ。
シャワーを浴びている映像と水の音。愛香が僕に何かを語りかける映像とその声。
僕から離れたソファーで、ひとり、膝を抱えている愛香の映像、すすり泣く声。