Nicotto Town



Be:9 zancoku na kkecca

身体の向きはそのままに、右手の剣を逆手持ちに変えながら相手の左側に素早く移動する。
鉄棒が振り下ろされた直後に、剣を彼の喉仏に持っていく。
 
力を込めてそのまま水平に押していく。
 
声にならぬ声をあげながら彼は喉を押さえながら倒れる。
むなしい音を立てて鉄棒は転がっていく。
 
このままでは終わらない。
まず、彼にカードを要求した。あっさりと彼は渡す。
ついでに、こんなことを言う。
「助けて、くれ…」
 
残念ながら、そんな計画は僕にない。
 
剣を順手持ちに変えると、立ったまま彼にまたがり、その身体を切りつけていく。
あちこちからあがる悲鳴と、僕の狂った叫声、そして雨の音が響く。
そこに彼の声はない。
雨はいつの間にか土砂降りになっていた。
 
膝をついて彼に言う。
「あしからず、な」
 
 
 
戻ると取り巻きはすぐに殺してしまった。愛香の腕をとるとそのままホテルに入る。
愛香は抵抗することを忘れるほど、放心していたようだった。
僕もそれに劣らぬほど放心していた。
 
フロントでは意味の分からないことを訊かれた。
 
政府から参加者に対して、メディシン部屋という特別な部屋が用意されているが、
それでいいか、という確認。僕は適当に頷いた。
 
キーを渡され案内される。
値段を訊いていなかったが、結構高そうな雰囲気。
しかし、9万もあれば間に合うだろう、そう思った。
 
 
 
そこからの記憶は曖昧だ。
 
シャワーを浴びている映像と水の音。愛香が僕に何かを語りかける映像とその声。
僕から離れたソファーで、ひとり、膝を抱えている愛香の映像、すすり泣く声。




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