Nicotto Town



Be:7 keicaku

速度が遅くても走り続ければ結構進むようだった。
知らず知らず、あまり人の通らない道を通ってきたのか、
幸運にも他の参加者とはすれ違わず、気付いてみれば知らない街。
 
「一旦止まろう。
青鬼都市、だっけ。ここって」
息を整えながら彼女に訊ねる。
 
「はい、たしか…」
彼女も息があがっている。
         
遊ぶ際は、遠くても最寄りのショッピングモールで済ませていたので、
真逆のここへは来たことがなかった。中学生のお小遣いじゃそれが限界。
 
「とりあえず、泊まる場所を探そうか…。ねっ」
視界の現実から逃避して精一杯明るく言う。
 
「はい…」
彼女の返事は暗い。
 
「これ、なんだよ…」
念の為につけたゴーグルから見て取れるのは、目の前に広がるいくつもの青い光。
 
皆、一定の距離を保って、そこにいた。
ある者は、喫茶店の中から、ある者は、雨宿りの為か建物の出入口付近から、
娯楽ビルにも結構の人数が居て、各階からそれぞれが外の様子をうかがっていた。
 
皆が皆を牽制しているようだった。さすがは都会。
2人以上でグループを作っている者たちも、その中には大勢いる。
 
皆が、強そうだということはさすがにないが、やはり人数には驚く。
 
 
 
少女を連れて、こんな所で生き延びるにはどうすればいいか、勘にそれを任せた。
 
ルートを確認し、彼女に囁く。
「ちょっと我慢な」
戸惑う彼女の腕を乱暴に掴んでホテルの方向に向かう。
 
予定通り、その金髪はホテルの手前で僕を手で制した。
 
「こっから先は俺らが行かせねぇぜ」
この機会に便乗してメリケン野郎のように、実力はどうであれ、
自分を最強な悪役に見せようとするやつはやっぱりいる。
 
「邪魔すんな。これからヘヴンなんだよ」
僕も2人を相手に、悪役になりきる。
 
「その子を、か?」
頭を少し上げて、こちらを見下すようにする。
僕は返事の代わりに、にんまりとして頷く。
 
途端、彼女が僕を振り払おうとした。
逃げようとしたのだろう。そんなのは想定の範囲内である。
しっかりと握り直しておく。
 
彼女が悲鳴をあげる中、
「うらやましいね。実にうらやましい」
金髪は気持ち悪い笑い声をあげながら言う。
 
「お前にやってもいいぜ。もちろん、僕を殺せたらだけどな」
彼女の力が一層強くなる。伴って悲鳴も大きくなる。
周囲は静まりかえって何事かと、こちらをうかがう。
 
僕が金髪に近づく段階から目をつけたやつもいたかも知れない。
 
「お前を殺すに決まってるだろ。ドアホが…。お前、その女、掴まえとけ」
僕をさげすんでから、取り巻きに指示をする。
 
愛香を取り巻きに渡すと、取り巻きは彼女をしっかりと掴まえた。
愛香は振り返ると僕を睨んだ。その目は弟によく似ていた。
やっぱり弟の嫁にしてやりたい。負けたらおしまいだ。




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