Be:7 keicaku
- カテゴリ:自作小説
- 2010/03/29 22:30:04
速度が遅くても走り続ければ結構進むようだった。
知らず知らず、あまり人の通らない道を通ってきたのか、
幸運にも他の参加者とはすれ違わず、気付いてみれば知らない街。
「一旦止まろう。
青鬼都市、だっけ。ここって」
息を整えながら彼女に訊ねる。
「はい、たしか…」
彼女も息があがっている。
遊ぶ際は、遠くても最寄りのショッピングモールで済ませていたので、
真逆のここへは来たことがなかった。中学生のお小遣いじゃそれが限界。
「とりあえず、泊まる場所を探そうか…。ねっ」
視界の現実から逃避して精一杯明るく言う。
「はい…」
彼女の返事は暗い。
「これ、なんだよ…」
念の為につけたゴーグルから見て取れるのは、目の前に広がるいくつもの青い光。
皆、一定の距離を保って、そこにいた。
ある者は、喫茶店の中から、ある者は、雨宿りの為か建物の出入口付近から、
娯楽ビルにも結構の人数が居て、各階からそれぞれが外の様子をうかがっていた。
皆が皆を牽制しているようだった。さすがは都会。
2人以上でグループを作っている者たちも、その中には大勢いる。
皆が、強そうだということはさすがにないが、やはり人数には驚く。
少女を連れて、こんな所で生き延びるにはどうすればいいか、勘にそれを任せた。
ルートを確認し、彼女に囁く。
「ちょっと我慢な」
戸惑う彼女の腕を乱暴に掴んでホテルの方向に向かう。
予定通り、その金髪はホテルの手前で僕を手で制した。
「こっから先は俺らが行かせねぇぜ」
この機会に便乗してメリケン野郎のように、実力はどうであれ、
自分を最強な悪役に見せようとするやつはやっぱりいる。
「邪魔すんな。これからヘヴンなんだよ」
僕も2人を相手に、悪役になりきる。
「その子を、か?」
頭を少し上げて、こちらを見下すようにする。
僕は返事の代わりに、にんまりとして頷く。
途端、彼女が僕を振り払おうとした。
逃げようとしたのだろう。そんなのは想定の範囲内である。
しっかりと握り直しておく。
彼女が悲鳴をあげる中、
「うらやましいね。実にうらやましい」
金髪は気持ち悪い笑い声をあげながら言う。
「お前にやってもいいぜ。もちろん、僕を殺せたらだけどな」
彼女の力が一層強くなる。伴って悲鳴も大きくなる。
周囲は静まりかえって何事かと、こちらをうかがう。
僕が金髪に近づく段階から目をつけたやつもいたかも知れない。
「お前を殺すに決まってるだろ。ドアホが…。お前、その女、掴まえとけ」
僕をさげすんでから、取り巻きに指示をする。
愛香を取り巻きに渡すと、取り巻きは彼女をしっかりと掴まえた。
愛香は振り返ると僕を睨んだ。その目は弟によく似ていた。
やっぱり弟の嫁にしてやりたい。負けたらおしまいだ。