Nicotto Town



Be:5 onnanoco

顔を上げてそちらを見る。青い光は消滅していた。
バルブを締めて、左手を傘に、右手を柄にかける。
 

ぐるっと一周見渡すが他に敵はいないようだった。光の点滅した方に歩き出す。
僕と、もう1人の誰かしかいない公園で、僕の靴は静かに砂を擦った。
 

「出てこいよ。正面勝負でいこう…」
唇が震えてしっかりと言えたか不安だ。そして返事はない。
 

視線をあちこちに散らしながら、出入口付近の植え込みに近づく。
目をつけた木の裏にその人がいるのではないか、と推測していた。
隠れられるような場所は他に見当たらない。
 

都会から村落、つまりは田舎までのランクは人口密度をもとに
A、B、C、D、Eと5つ、定められている。
さらに過疎が進んでいる地域は、Vとなっている。
 
ここは住宅都市、つまり皆が睡眠をとる為に帰って来るベッドタウン。
ランクはBとそれなりに密度は高い。
つまり、
僕はこれから歳など無関係に顔見知りをも殺めなくてはならないかも知れない。
 

そう思うと自分に変な不信感が湧いた。駆けだしてどこかに逃げたくなった。
 
「さっさと、…出てこいよ!!」
やけに叫ぶと、剣を抜く。殺す準備は万端だ。
 
すると狙った通りの場所から物音。わざとらしく構えるようなことはしなかった。
どんな敵だろうと最大の力で殺すのみ。


「すみません…」
しかし、出て来た人物に僕の決意は揺らいだ。
 
「…君」
 
「…」
 
「選ばれちゃったの?」
 
「…はい」
 
「嫌だな…。ほんとやだよ…」
剣をしまう。
 
相手は2つ下。弟の同級生で、よくうちにも遊びに来ていた。
 
僕はうちに友達をつれてくることがあっても男子ばかりだったので、
弟が彼女をつれてきた時はかなり驚いたし、
その衝撃から彼女の顔をしっかりと覚えてしまっていた。

彼女は今にも泣きそうだ。


「どっかでお喋りでもしよう…」
隠れられるような遊具があったので、そこを目指した。
早く入ろう、と焦った気持ちが、僕の手に彼女の腕を引っ張らせた。
よろけながらも彼女はついて来る。 

到着すると彼女を先に入らせて、周囲を見渡してから僕も入った。
 
「穴のないところを背中につけて。
多分身体の半分以上を確認出来ないとゴーグルは反応しない」
うっとうしく青い光を点滅させるゴーグルを外しながら言う。 


遊具は、お椀をひっくり返したものに、
不規則に穴をたくさんあけたような物だった。
 
「うん…」
まだ泣いていた。ポケットを探るが、カードしか入っていない。
カードでは涙は拭えない。
 
「あんま泣くなよ。大丈夫だ。…あんま大丈夫じゃないけど」
くすりと笑う彼女。
 
いい話題が見つからず僕はしばらく考えた。
さっきのメリケン野郎と、この子を比べるようなことは出来ない。
殺すか殺さないか、という次元ではないのだ。




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