Nicotto Town



Be:4 kasa to meliken

一日目

一般市民と、このサバイバルの参加者を見分けるゴーグルをつけると、
お尻のポケットに入った3万円分のカードを確かめる。


やられてしまえば骨折のまぬがれないところや、急所となる部分には、
父親が買って来てくれたプロテクターが入っている。

このサバイバルの為にそういった物を売っていた店があったらしい。


それから武器はビニール傘に仕込まれた、割と細身な剣。
柄の部分が扱いやすいように真っすぐで、かつ
ゴム製なのでカモフラには一切なっていない。


しかし、剣をしまえば傘として機能するので、文句はない。
一点だけ不満というか、不安なのは鍔がないことだ。
鍔迫り合いなどすれば指は、そがれてしまう。


家を出る時、いつも通りに行ってきます、と言った。
返事はない。家族は言葉に詰まっていたのだ。


必ず帰って来るから、いつも通りに頼むよ、と僕が言うと
いつものいってらっしゃい、が返ってきた。

そこから僕は歩き出す。振り返ることはしなかった。




10分も経たないうちに、胸に小さな青い光を点滅させた男子を見つける。
ゴーグルを一度外し、近づく彼をもう一度確かめる。

外した途端青い光は消滅した。なるほど、これなら分かりやすい
と思うのとほぼ同時に、彼との距離が縮まって、
それがクラスメイトであることが分かった。


「よう、お前も参加者か」

手を挙げて、聞こえるように声を張る。
残った手は鞘となる傘の方をしっかりと握っていた。


「ようじゃねぇよ。こんないいチャンスはねぇな。さっさと殺されてくれ」


「お前すげぇ悪役似合いそうだな。あんま関わったことないけど、僕に恨み、あるの?」

しっかりとした足取りでこちらに向かうクラスメート。もう距離はあまりない。


「うぜぇんだよ」
足を止める彼。あと2メーターというところか。


「うぜぇんだよ、じゃねぇよ。ばーか」


「真似すんな!ボケッ!雨降ってねぇのに傘なんか持って、
お前、馬鹿だろ!」


カモフラ、出来ているようだった。


「お前が馬鹿だよ」
言って足に力を込めると駆け出す。
右手が柄を握り、低い態勢で剣を抜き、いい距離で腹めがけ斬りあげる。


即座に構え直すが、無駄だった。


「剣とか、ありかよ…」

崩れ落ちるクラスメイト。防具をしていなかったらしい。


「カード、くれ」
近づいて言う。


「…嫌だと、言ったら…」


「マンガみたく、くせぇセリフ吐いてんなよ」

崩れている彼の頭を蹴りあげると、彼は後方にひっくり返った。
幾度も苦しそうな咳をする。


ポケットをいくつか探るとカードが見つかったので、自分の物にした。


「汚ねぇぞ…」


「じゃあ、何が綺麗なんだ」
その目を覗く。


「…」


「見つからないか。ゆっくり考えるといい」
苦しくないよう、素早くとどめを差す。
あっさりと彼は死んだ。


ようやく気付く。彼の武器はメリケンサックだったようだ。




そこに一陣の風が吹き抜ける。
僕は唾を飲み込む。


冷静を装っていたが、もう限界だった。
手の震えは収まらず、心臓も口から出てきてしまいそうだ。
吐き気も催していて、全身に力が入らない。


彼の死体から離れると少し先の公園に立ちよった。
水を飲んでいる途中に視界の端で青い光が点滅した。

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2010/03/28 22:03
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