Nicotto Town



Be:1 sora no mucou

小学生の弟は言った。
「ねぇ、雲の上って本当にいつも晴れなの?」

僕は答える。「知らん」と。

見上げると弟の質問にあった雲は今、空に一片もない。
よく晴れた日だった。

僕たちはバス停のベンチで、バスが来るのを待つ。


「死んじゃったね。本当に」
弟が言う。

「そうじゃのぉ」


「なんでお母さん達は来なかったんだろ。ひどいよ」


「しごと」


「でも…、最期だって分かってたじゃん…」
やるせなさげに頭を垂れて、前かがみになる弟。

その背中を眺めていると、言葉が口をついて出た。

「もう、どうしようもないよ」

振り返って弟は僕を睨む。きりっとしたその目から
僕は視線を逸らしながら立った。バスが来たからだった。


誰も自分が死ぬとは思っていない。



乗り込むと適当な席に座る。弟は僕の後ろの席に着いた。


流れる景色は殺風景で面白みがない。100年も変わっていないそうだ。


今さっき、目の前で亡くなったのは曾おじいさん。
特別に好きだった、とかそういう記憶は僕にない。
仲の良かった弟にはあるに違いないが。


病院から電話があったのは朝。もうダメです、という内容だ。
その「ダメ」は、これ以上生きられません、ということを示している。
その歳は150を越えていた。

平成という時代では100歳が長寿とされていたらしいが
延命が進んだ今では、考えられないことだ。


曾おじいさんの死を宣告されたはずの父親だったが受話器を置くと、

【帰りに牛乳買って来て】とでも言うように、
「おじいちゃん、もう持たないみたいだから、お前たちで看取ってきて」と言った。


そして僕たちは学校を休んで病院に行って来た。曾おじいさんが死ぬまで傍にいた。
僕は沈黙で、弟は号泣だった。

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2010/03/28 22:02
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