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■近代文藝之研究|研究|近代批評の意義(17)

■近代文藝之研究|研究|近代批評の意義 (17)

併しながら斯くの如き批評が十九世紀の中葉以後に帶着し來たつた重要なる意義傾向は、實は此の點から始まる。蓋し批評が創作と異なる最大の理由は、其の如何なる方式に於てか一層多く知識推理の作用を有する點に存する。自然の事象に感じて、之れを文學に托すれば創作を成し、創作中の事象に感じて之れを文字に托すれば批評を成す。批評と創作と同じく感情を根本とすべきは勿論であるが、唯是れにありては其の感情を〓(「テヘン」+「慮」)ぶる間に理智の案排を要すること多く、彼れにありては寧ろ之れを感情下に埋沒せしめんと欲するの差がある。或は作品の鑑賞享樂を其のまゝに寫し出だして、文字通りの第二の創作を成すを批評の本意と説くものも無いではないが、是れはどうも我等が懷く批評といふ語の意義とは違ふやうである。鑑賞享樂の感に如何なる方式を以てか理知の味ひを加へて描出する、それに眞の批評といふ意識は發しなくてはならぬ。



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*註1:併しながら
「併」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shikashi.jpg

*註2:斯くの如き批評・蓋し批評が・批評を成す・批評と創作・批評の本意・懷く批評・眞の批評
「評」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hyou.jpg

*註3:十九世紀
「紀」の俗字体(か?)。旁の「己」が「已」。

*註4:重要なる意義・案排を要する
「要」の俗字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg

*註5:一層多く
「層」の旧字体。「曽」が「曾」。

*註6:知識推理
「識」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shiki.jpg

*註7:文學に托す・文字に托す
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg

*註8:感情を根本・其の感情・之れを感情下に
「情」の正字体。「月」は「円」。

*註9:〓ぶる間に
「〓」は「テヘン」+「慮」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/cyo_noberu.jpg

*註10:文字通り
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
「通」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註11:説くもの
「説」の旧字体。旁は「兌」。

*註12:違ふやう
「違」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

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