「特別展・長谷川等伯」
- カテゴリ:レジャー/旅行
- 2010/03/03 01:36:22
3月2日、
安寿は早起きをして、
家の掃除をさっさと済ませ、
お弁当を作って(最近のマイ・ブーム)、
上野の東京国立博物館へ
「特別展・長谷川等伯」を見に行きました。
長谷川等伯展については、こちらのHPを見てね。
http://www.tohaku400th.jp/
信長・秀吉・家康と同時代の人。
時の武将の求めに応じて、城や仏閣に
豪華絢爛な襖や屏風が描かれていた時代です。
絵師では、狩野派が隆盛の時期。
権力者の注文に応えるかのように、
金箔を貼りつけた背景に力強い獅子を描いていくような作風が
狩野派の特徴なんですが、
この狩野派に対抗するように登場してきたのが長谷川等伯。
とても新鮮でした。
長谷川等伯という人の図案というか「ねらい」が、
そして、その「ねらい」が生み出す世界が。
まず、同じ金箔を貼る襖でも、
長谷川等伯の画題は「野の草花」なんですね。
松の大樹が絵の空間構成を決めていても、
目が向かうのは、薄や芙蓉、楓なんです。
この絵は、
豊臣秀吉の亡き子・鶴丸を弔うために建立された
京都・千積院のために描かれたという事情が
あったのかもしれませんが、
金箔を背景にしながら、
野の草や紅葉しきっていない楓を
描いてしまうという画題の選び方。
狩野派がゴールド/ゴージャス/金満趣味だとすれば、
(狩野派ファン御免)
長谷川等伯はゴールドを使って
「もののあはれ」を演出するという「粋」があります。
(…と、素人批評)
そして、次に「繊細さ」。
例えば、金箔を背景に、
芽を出したばかりの柳の緑を描く
その筆遣いの「繊細さ」。
同じ細かな筆遣いでも
「緻密さ」とは違う
「繊細さ」というものがあるのですね。
同じ絵の中に、
夏の流れる柳が描かれているので
芽吹いたばかりの柳の「繊細さ」が、
それだけ際だつのでした。
長谷川等伯は晩年、
極彩色の世界から、
水墨画の世界へと向かっていきます。
水墨画の世界は、
画題が半ば決まっているので、
何よりも空間の使い方、
そして墨の濃淡と力強さが勝負どころとなります。
ここでも長谷川等伯は非凡です。
大きく空間をとって、
小さく点景を描くという
水墨画固有の世界を外しません。
でも、私自身としては、
「水墨画も、とても上手」
という印象の域を出るものではありませんでした。
ですが…、
この展覧会の目玉であり、
展覧会の最後に展示されている「松林図屏風」。
水墨画の最高峰と言われている名画です。
あの…、 (^^;ゞ
実を言うと私、
「この絵のいったいどこがいいんだろう」
と今まで思ってきたのです。
その理由が、今日初めてわかりました。
これはね、
図版を見ていてもダメな絵なんです。
ハイビジョン映像でもダメ。
これだけは現物を見ないとダメな絵なんです。
不思議…
この感覚はいったい何だろう…
それをうまく表現できる言葉が見つかるまで
しばらく絵の前に立ち続けて、
なんとなく、わかってきたこと。
「松林図屏風」は、
松そのものに視線を向ける絵ではないのです。
この絵で描いているのは、
松ではなく、
松林に立ち籠める霧…。
そして、霧は、
墨を含んだ筆では描きようがないのです。
だからこそ、
一本の松の幹半ばが霧に隠れている姿を描くために、
水墨画の濃淡が生きてくるのです。
ところが、
図版や映像でこの絵を見ると、
松だけが気になってしまうのですね。
松の配置や
松の幹の濃淡だけが目についてしまうのです。
しかし、見るべきは、
描かれていない霧です。
はい、私の結論。
この絵は、
図版で見るのではなく、
現物を間近で見るのではなく、
5~7メートルぐらい離れて見たとき、
その真価が発揮されます。
そして、
それがわかった時、
安寿はおもむろに
お弁当を詰めたバックの中から、
ヘッドホンを取り出して、
「松林図屏風」の前で、
この曲を聴いてみたのでした。
http://www.youtube.com/watch?v=wivo94ylmhE
(コメントに続く)
キース・ジャレットの「ケルン・コンサート」
名盤だと思います。
「ケルン・コンサート」は
確かPART3に分かれる長い曲ですから、
Youtubeで残りを探して聴いてみてください(右下にアクセス先が出ています)。
これは、PART1のまだ1/3です。
ともかく「松林図屏風」に接近したかと思えば、
離れて全体を俯瞰してみるという、
端から見れば、得体の知れない不審な行動をしながら、
この絵の
この曲の
世界にのめり込んでいた安寿がいました。
ああ、堪能…。
新聞屋を揺すってタダ券をゲットした…、 ☆\(ーーメ) バカモン
いえいえ、
無料招待券をありがたくいただいた
甲斐があったというものです。 ☆\(ーーメ) シラジラシイ
その後、
展示会場のドリンクコーナーで、
(ここは甘味処のサービスもありますが、
お弁当を開いても許される場所なのです)
自作のお弁当を開きまして、これまた堪能。 (^^;ゞ
(海苔弁・梅干しに
肉団子/自家製お新香/ちくわ磯辺揚げ/インゲンごま和え)
もちろん、マイ水筒のお茶付き。
そして、展示会場とは別の、
本館・通常展示をぐるりと巡り、
第1火曜日は15:00より館内ツアーがあるので、
それまで参加して…、
加えて、ミュージアム・ショップも眺めて…。
なんと
朝の開館9時30分から
閉館の5時まで
ずっと国立博物館を楽しんでしまいました。
おみやげは、
長谷川等伯の絵はがき。
(図版は高かったし、
「松林図屏風」は
図版で見てもダメと理解しただけに…)
ああ、贅沢な一日でした。
2010/03/03
安寿