Nicotto Town



初夢の続きは (2) 『小吉』

霞 松梨がこの街に引っ越して来たのは、中学3年、それも受験寸前のことだった。
本人たっての希望で親元を離れ、祖父母のいるこの街に越してきたのだという。
この時期の転校生が、クラスに溶け込むのは難しいと思ったのだが
なぜか梅子とだけは、すぐに打ち解けた。
そのせいか、梅子の幼馴染である悟とも、次第に仲良くなり、
いつのまにか3人で、行動をするようになっていった。
そして別段、示し合わせたわけではないが、3人共が同じ高校に、進学した。
故に悟と松梨は、決して知らない間柄ではなかったのだが・・・。

「よう松梨!  誰かと待ち合わせか?」
悟は、答えを知りながらも極めて明るく声を掛けた。
けれども松梨の反応は意外なものだった。
ゆっくりと双眸を悟に向けると、一言
「待たせるわね」

「え?」

悟は、予想外のリアクションに頭の中が?で埋まった。
「あれ? 約束なんてしてたっけ?」

少しの沈黙の後、ようやく松梨は口を開いた。
「…冗談よ」

(あれ?松梨って冗談言うタイプだったか?)

あっけにとられている悟を前に、改めて松梨は
「間宮君、奇遇ね、どうしたの?」
「奇遇も、何も、絶対会うだろ?お互い梅子に誘われて参拝に来たんだし」
「あら、知ってたの?意地が悪い…」
そして少し下を向き、
「そんなことはないわ、この世の中、絶対なんて言い切れる物はないでしょ…」
ボソリとそうつぶやくと、門柱に預けていた体重を反動に利用して、松梨は体を起こして悟と向き合った。
「っと…」
が、反動が強すぎたのか、寒さで体が冷え切っていたのか、松梨の体は制御を失い悟へもたれかかった。

あわてて悟は、松梨を受け止める。
「あ、ごめん」
「ううん こっちこそごめんね」
恥ずかしさからかなんとなく、そのまま2人は固まってしまった。

動けるようになったのは、遥か後ろから、聞こえる声のおかげだった。

「さ~と~る~!松梨に何してんだ~!!」
梅子が、ものすごい形相で駆け寄ってきた。

「おいおい、何もしてないだろ?松梨が転びそうになったから支えただけだって」
「どうかな~?」
梅子はいぶかしげな目つきで、しげしげと悟を見つめる。
「ホントだって~なぁ松梨?」
悟は、松梨に助け舟を求めた。ナベを含めた3人の視線が一斉に松梨に注がれる。
「…え~と。 どうだったかしら?」

「…さて、お参り、お参り」
曖昧な返事に悟は一人歩き出すしかなかった。

「はぁ~寒うぅ…」
吹き抜けていく、冷たい風に梅子が、キュッと身を縮める。
よく新年のことを新春なんていうけれど
もちろん真冬の真っ只中、芯まで冷えそうな寒さの中、梅子がさらに続けた。
「やっぱり家にいればよかった!」
「いや、気持ちはわかるが、そもそもコレお前の企画じゃないのか?」
「まぁ、そうなんだけど~」
「ナベは、あれだよな?巫女さん見たさ…」
ナベは素早く悟の後ろに周り、口を塞ぎにかかった。
「お前は、突然何を言い出すんだ! 日本人としての務めだぞ、初詣は~あははは」

4人並んで、とりとめの無い話をしながら進んでいくと、すぐに、賽銭箱の前まで到着した。

「何お願いしたの?」
梅子は悟の顔を覗き込んで聞いてきた。
「こういうのは、言ったら叶わんもんだろ?」
「チッ、バレてたか」
「お前な…」
梅子は油断も隙もなかった。

「みんなおみくじは引くんだろ?」
参拝が終わるとナベが声を上げた。
「今年最初の運試しって奴ね! これは気合い入れてかないと」
梅子も呼応するように、テンションをあげていく
悟は、振り返り松梨の様子を伺った。
「松梨も引くんだろ?」
「そうね~」
松梨は少し思案している素振りを見せた後、笑顔で答えた。
「もちろん」


「やった~大吉ぃ~」
最初に声をあげたのは梅子だった。
「ほれほれ」
嬉しそうに、おみくじを悟の目の前で、振ってみせる。
「はいはい」
(まったく、いつまで経っても、ガキみたいな奴だな)
悟は、興味なさげに相槌を打った。
「あ、私も」
松梨も大吉だったようで、梅子とハイタッチしている。
「お~俺も!」
(ナベまでも…)
悟に、焦りが生じた。
「正月のおみくじってのはさ、大吉が多目に入ってるものなんだよ!」
悟は、自らを鼓舞させるように、そう言い放ちおみくじを開ける。

集まる4人の視線。
「…小吉」
「あ~ははは」
梅子が笑い出す。
「多めに入ってるって言ったの誰でしたっけ?」
「さてと…もう一回引くことにするかな」
悟は回れ右をするが、その腕を梅子に掴まれ止った。
「ん?」
「悟、お金もったいないよ、交換してあげるから」
「え?いいのか? や~持つべきものは幼馴染だな」
子供っぽく喜ぶと、悟は梅子とおみくじを交換した。
瀬戸神社のおみくじは、香りつきの栞になっている。
さして、読書に興味のない悟だが、大吉の栞を手にして本当に喜んだ。
梅子もそんな悟を見て、嬉しくなった。

ただ一人松梨だけが、複雑な表情を浮かべていた。

アバター
2010/11/14 18:03
やっとここまで読めました(・㉨・;A)アセアセ…
なかなか前に進めないよぉ。o.゚。(・ェ・。`人)。o.゚。ゴミンネェ

おみくじって交換ありなの???
( *´艸`)クスッ♪
いろいろ絡み合っていくんかな???
(。◡ˇ‸◡) ぅーん
アバター
2010/03/17 01:57
ん~。お話が面白くないってことじゃないですよぅ~~!!

フクザツなのは、登場人物たちの胸中です(^^;;
いろいろねー。考えちゃうよねー。
松梨ちゃんも、そりゃフクザツよねーー。

言葉足らずですみませんorz
アバター
2010/03/05 00:29
松梨の胸中が知りたいところですね。

でも、おみきじの交換ってアリなんですか~?
((●≧艸≦)プププッ そこにつまずいてしまいました・・・スミマセン。。。

このままいくと、
悟って・・・モテモテなんですかね?
アバター
2010/03/04 02:39
Re:みちる♪ さん

複雑・・・。というかこの話、ひょっとしてまったく面白くないのかな?

もしかしたら、まさかの打ち切りあるかもしれませんw
アバター
2010/03/04 02:38
Re:Sakura さん

なかなか鋭いですね!梅子と松梨と悟の三角かと思いきや

さらに、人は増えていきます・・・。お楽しみに
アバター
2010/03/04 02:36
Re:にゃんぴち さん

どうなんでしょうね~w本当に当人同士はなにもないのかな??

次はガラッと場面が変わります。ご期待ください!
アバター
2010/03/01 20:25
フクザツ・・・・。
アバター
2010/02/28 20:28
私の場合も多分、複雑な顔になってると思う~

梅子は悟のことすきなのかなぁ~?
アバター
2010/02/28 03:47
ん~~~

それは複雑かもね~

交換した本人同士は別になんでもなくてもね~~~( ̄m ̄*)



月別アーカイブ

2024

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009


Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.