■近代文藝之研究|研究|藝術と實生活の…(29)
- カテゴリ:その他
- 2010/02/18 01:22:37
■近代文藝之研究|研究|藝術と實生活の界に横たはる一線|七 (4)
元來實行の上に痛切な喜憂哀樂の感を懷くものが、何の必要があつて之れをまどろつこい藝術に托するか。何故に手つ取り早く之れを實行の上に追究しないか。こゝで今一度藝術發生の動機すなはち本能問題に立ち戻るが、それが即ち自己表現の已みがたい本能とも言へやう。我が三寸の胸に欝積する感情は切に表現を求める。夫の『藝術起原』の著者ヒルン氏がいふ如く、情緒の表現そのものが本來其の情緒を放散し疏通せしむる一種の慰藉作用を有して生じたものである。此の點から言へば我等が情緒を有する、而して之れに應ずる表現(Exprssion)を要する、皆畢竟は自己保存の要求から來た本能である。併し自己の表現、情の表現といふ時は範圍は廣い。
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*註1:何の必要・表現(Exprssion)を要する・自己保存の要求
「要」の俗字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg
*註2:追究しないか
「追」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註3:立ち戻る
「戻」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/modosu.jpg
*註4:欝積する感情
「欝」の旧字体。Unicode にも文字種がないようなので作字してみた。(「欝」は略字体、「鬱」は正字体)
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/utsu.jpg
「情」の正字体。「月」は「円」。
*註5:藝術起原
「起」の正字体。旁の「己」が「巳」。
*註6:著者ヒルン氏
「著」の正字体。原本では「着」となっていたが誤植と思われるのであらためた。(国立国会図書館の原本画像自体に訂正書き込みあり)
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tyo_arawasu.jpg
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg
*註7:情緒の表現・情緒を放散・情緒を有する・情の表現
「情」の正字体。「月」は「円」。
「緒」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syo_o.jpg
*註8:疏通せしむる
「通」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註9:皆畢竟は
「竟」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_tsuini.jpg
*註10:併し自己の
「併」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shikashi.jpg
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
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